2026/7/27
第六夜 はじめての名前
「──佐野です。佐野、朔(さく)」
聞いてしまえば、あっけなかった。名前というのは、ずっと遠くにある星のようでいて、聞けば三秒で手元に落ちてくる。
「朔って、新月の朔?」 「そうです。真っ暗な夜の日に生まれたので」
彼女は思わず笑ってしまった。毎晩、月のない夜を走る終電のひとつ前で、新月の名前を持つ人を探していたなんて。
「じゃあ、わたしの名前も」
言いかけたとき、電車がホームに滑りこんできた。七つ目の駅。彼の降りる駅。
「──続きは、今度」
ドアが閉まる。窓の向こうで、朔がはじめて、声を出して笑った。
(つづく)

感想1 件
小谷 ひなた2026/7/27
第一夜からずっと追いかけています。朔=新月って、月のない夜の伏線だったんですね…。次の夜まで生きられます。
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